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解決事例

従業員による計画的な未払い残業代請求 〜独自の業務報告書に潜むリスク〜

ご相談の背景・トラブルの経緯

ある企業様にて、有期雇用のアルバイトとして中途採用した従業員との間で発生した、未払い残業代請求のトラブル事例です。

この従業員は入社直後、「出勤簿の代わりに、自分が作成したオリジナルの業務報告書を使用したい」と会社へ申し入れてきました。また、「自身が未経験の職種なので、業務終了後も会社に残って勉強をしながら仕事をしたい」と希望しました。

会社側は、本人の前向きな姿勢を汲み取りこれを承諾。終業時刻後に会社に残っている時間は「自己研鑽(勉強)の時間」であると認識しており、本人が提出する独自の業務報告書に、内容を深く確認せずにサインをしてしまっていました。

トラブルの発生

その後、当該従業員は業務スキルが著しく不足していたと判断し、会社は有期雇用契約の期間満了をもって契約を終了(雇止め)としました。

すると退職後、突然その従業員から「業務報告書に記載されている勤務時間どおりの残業代を支払え」という請求の内容証明が届きました。 会社が改めて業務報告書を確認すると、そこには毎月280〜300時間という膨大な労働時間が記載されていたのです。

結果:労働審判での争いへ

会社側は「残業ではなく勉強時間であった」と主張しましたが、話し合いは平行線をたどり、労働審判へと発展しました。

結果として、会社が継続的にサインをしていた「独自の業務報告書」が強力な証拠とみなされ、そこに記載されていた時間は「労働時間」として認められてしまいました。 最終的に、会社は当該従業員に対して多額の解決金を支払う形で決着することとなりました。

最初から会社に多額の請求を行うことを目論んでいた計画的な犯行の可能性も否めず、会社にとっては非常に手痛い出費と精神的ダメージを負う結果となりました。

社労士からの解説・対策ポイント

今回のケースから学ぶべき重要な教訓は以下の通りです。

  1. 労働時間の管理は会社が主導権を握る

  2. 従業員が独自に作成した書式やルールを安易に受け入れてはいけません。労働時間の把握は、タイムカードやクラウド勤怠管理システムなど、客観的な記録を用いて会社が厳格に管理する必要があります。

  3. 書類への安易なサイン・押印は厳禁

  4. 従業員から提出された書類(業務報告書など)にサインや押印をする行為は、「その内容を会社が承認した」という法的な証拠になり得ます。内容を精査せずに承認することは大変危険です。

  5. 「残業の事前許可制」の徹底

  6. 終業時刻以降に会社に残る場合、それが自己研鑽(勉強)なのか業務(残業)なのかを明確に区別しなければなりません。業務として残る場合は、「事前の残業申請と管理者の許可」を必須とするルールを就業規則に定め、運用を徹底することが不可欠です。

経営者の皆様へ

「うちの社員に限ってそんなことはない」「本人が勉強したいと言っているから」という善意が、後々大きなトラブルを招くケースが増えています。 労働時間管理や就業規則の見直しに少しでも不安を感じられたら、トラブルが表面化する前に、ぜひ当事務所までご相談ください。御社の実情に合わせた労務管理体制の構築をサポートいたします。

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メイクル経営管理事務所 代表 海田 正夫
一言 約10年間の会社役員の経験から会社経営がいかに大変かはよく分かっているつもりです。 「法律を守っていたら会社はつぶれてしまう。」という社長の気持もよく分かります。 しかし最低限の法律を守っていないと、そこから生ずる社員の不利益に対して損害賠償の対象となることがあり、その額が1人当たり数千万円になることもあります。当事務所は、会社経営者に労務関係の法律その他の情報を提供し、相談に対応することによって「経営上の選択肢を広げて頂くこと」を事務所理念としています。 メイクル経営管理事務所(特定社会保険労務士/行政書士) (社会保険労務士個人情報事務所 認証番号080699)
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